空想が現実に!タイタニック号遭難事件

空想の世界と現実との完全な一致の例として、あまりにも有名なのが、1912年4月に発生した「タイタニック号事件」だ。この世界最大の海難事故を予言したかのような小説や文章は、枚挙にいとまがない。

まず最初に詩があった。アメリカの女流詩人シーリア・サクスターは、1874年、客船が氷山に激突する、という内容の詩を書いた。その悲歌のなかでは、乗客全員が死亡する、ということになっていた。

つづいて1886年、イギリスの著名なジャーナリストであるウィリアム・T・ステッドが、客船が衝突事故を起こすという小説を書いた。その船には救命ボートが足りずに、最悪の事態となるという筋書きだった。

さらにステッドは1892年、『旧世界から新世界へ』という本を出版する。この本には、北大西洋上で氷山に激突し、それが原因で沈没する船の話が出てくる。

また、沈む船の船長の名前はE・J・スミスだった。実在するタイタニック号船長と同じ名字だ。さらに恐ろしいのは、作者ステッド自身がタイタニック号に乗っており、命を落としたという事実だ。

しかも驚くべきことに、このステッドの死を予言していた人物がいた。ジョー・デズモンドという若いジャーナリストである。ステッドとデズモンドがロンドンをいっしょに散策していたときのことだった。

ステッドが近々乗るタイタニック号についてまくしたてているとき、デズモンドは奇妙な気分に襲われた。生まれて初めて、死が身辺に迫っているという感覚がわいてきたのだった。そして、ステッドが間もなく死ぬだろうと確信したのである。

このステッドについては、さらに不思議な現象も報告されている。タイタニック号が沈没する前、正確にはタイタニック号が氷山と衝突した十分後、つまり沈没するまでには、あと二時間半もあったとき、まだ生きているステッドの顔が、遠く離れたアメリカのマサチューセッツ州のチェイス夫人によって目撃されたのである。

突然、一人の人間の顔が出現し、まるで肉体から離脱した霊魂のように、手をのばせば届きそうな位置にとどまったまま、彼女の目の前で浮いているのだった。その髪とヒゲが濡れたままになっているのに目をとめたチェイス夫人は、タイタニック号のニュースを聞いた後、娘の買ってきた新聞に掲載されていたステッドの写真を見て、一昨日目撃した人相と同一人物であることを見てとったのである。

1893年には、ドイツ人作家ゲルハルト・ハウフトマンが『アトランティス』という名前の小説を書いている。

この小説はローランド号という豪華客船の沈没を描いたものである。ハウフトマンはローランド号を「不沈」という言葉で形容し、「タイタニック(巨大な)」という形容詞を何回も使っている。ニューヨークに向けて出発したローランド号は、原因不明の衝突事故で沈没し、多くの人命が失われるという筋立てだ。

『アトランティス』の初版はドイツ国内のみの発行で、部数も少なかった。二十世紀初頭、ハウフトマンはようやく世界的評価を得る作家となった。これを期に彼の初期作品が次々と出版されたが、『アトランティス』の英語版が刊行されたのは、1912年の初めで、タイタニック号沈没事件が起きるほんの数ヵ月前のことだったのだ。

タイタニック号の処女航海に向けての準備が着々と進行していた頃、『ポピュラー・マガジン』という雑誌の5月号に、『アドミラル号』という短編小説が掲載された。

この小説の中で、全長が240メートルあるこの船が北大西洋上を22・5ノットのスピードで進んでいた時に突如として現れた氷山に衝突し、沈没するという光景が描かれている。多くの乗客は冷たい海水の中で息絶えるが、たまたま通りかかった蒸気船に助けられた乗客もいたという内容だ。

細かい描写がほぼ一致しているので、あとからこれを読んだ人々は作者メイン・クルー・ガーネットがタイタニック号事故を基にして書いた小説であると勘違いしたほどだ。しかも、物語の中でアドミラル号が氷山と衝突する地点が北緯43度に設定されていた事実には、誰もが驚いた。この地点は、まさにタイタニック号が沈没した場所だったのである。

しかしこの作品が生まれた背景にも、驚くべき偶然が隠されていたのだ。ガーネットがこの作品を思いついたのは、オリンピック号という船に乗って旅をしている時だった。夢で見たストーリーをそのまま小説にしたのだ。このオリンピック号というのが、タイタニックのプロトタイプ的な意味を持つ船で、姉妹船として位置づけられていたのである。タイタニックとオリンピックには、外見をはじめとして類似点がたくさんあったことは容易に想像できる。

予知ともいえる現象のなかで、もっとも的中率の高いものは、1898年に発表されたモーガン・ロバートソンの小説『タイタン号の遭難』である。そこには、気味が悪くなるほどの多くの一致が見られる。ここでそのおもだった類似点を列挙してみよう。

  小説 現実
船の名前 タイタン号 タイタニック号
船籍 イギリス イギリス
事故の時期 4月 4月
船の全長 800フィート 882.5フィート
排水量 7万5000トン 6万6000トン
積載可能量 約3000トンと乗員 約3000トンと乗員
船のプロベラ数 3 3
救命ボート数 24 20
氷山と衝突したときの速度 25ノット 23ノット
衝突箇所 右舷 右舷

小説に登場するタイタン号という船は、当時の最先端の技術を駆使して建造された豪華船で、「決して沈まない」という設定になっている。この船がある年の4月に処女航海に出たとき、遭難するというのが話のあらすじだ。

船に乗っていたのは、当時のヨーロッパとアメリカの社交界を代表するような人々だった。記録的なスピードで北大西洋を進んでいたタイタン号は、突如として現れた氷山に激突し、沈没する。タイタン号には救命ボートが24隻しか積まれておらず、そのために多くの人々が犠牲となった。

タイタンというのは、ギリシャ神話に出てくる巨人の名だ。神々に滅ぼされる運命であり、それは不吉な末路とさえいえるものだった。


タイタニック <2枚組>

タイタニックがタイタンからとられた名前であることはいうまでもない。実は、本来はタイタンそのものだったのである。ホワイト・スター・ライン社の船の名前は、オリンピック、オーシャニックというように、かならずic(ック)で終わることになっていた。だから、タイタニックもその慣例で(ック)がつけられただけで、発想としてはまさにタイタンだったのだ。モーガンの小説との一致は、もっと深かったことになる。

とにかく、船の名称、絶対に沈没しないとされた豪華船が沈んだこと、原因、そして船のデータなどが、まるっきり一致しているのである。そのため超心理学の世界では、小説『タイタン号の遭難』は、人間の無意識の予知を虚構の世界で再現した、もっとも見事な例とみなされている。ちなみにモーガンは、のちにピストル自殺をしてこの世を去っている。

タイタニックの事故を予知した人々! に続く

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